2026年以降のHeガスについて
①イラン戦争のヘリウム供給への影響
授業の中でたびたびお伝えしてきましたが、今後のヘリウムについてネガティヴな思考が現実味を帯びてきました。
現在日本はヘリウムの輸入先としてアメリカ、中東カタールの2カ国しかありません。
中東カタールのラスラファンには世界最大級のヘリウム抽出・精製プラント(Helium 1, 2, 3)が集中的に配置されていますが、先般アメリカによりこの施設が攻撃を受け操業停止したことで、世界のヘリウム供給量の約32%が一瞬にして失われました。
②イラン戦争による供給ショック
(2026年3月の現状)
2026年以降の日本の需給見通し
在庫の枯渇リスク: 日本国内には約2ヶ月分の在庫があるとされていますが、カタールからの輸入が再開されない限り、2026年中盤から実質的な「供給不足の本番」が始まると予測されています。
価格の暴騰: すでにスポット価格は2倍以上に跳ね上がっており、今後さらに高騰(1,000ドル/MCF超)する恐れがあります。
構造的な転換: 2026年以降、日本は「輸入に頼る」モデルから、ヘリウム回収・リサイクル装置の導入を義務化するような「循環型社会」への移行を加速せざるを得なくなります。
③ヘリウム供給の現状と未来
日本政府は「ただちに需給上の支障が生じるわけではない」としていますが、紛争が数ヶ月以上に及べば、2026年後半以降は産業界全体で深刻な影響が出ると考えられます。
この2026年のヘリウムショックを受け、風船(イベント・玩具用)市場は過去最大の危機に直面しています。
一言で言えば、「空に浮かぶ風船」が日常から消える可能性が極めて高い状況です。
もし入手できたとしても、ガス代の高騰により風船1個あたりの価格が数倍に跳ね上がると予想されます。
2026年以降、風船市場は「ヘリウムなし」で成立するビジネスモデルへの抜本的な改革を迫られることになります。
④イラン攻撃の影響
イランの影響で今後はAIの分野でも圧迫を受けることになります。
AIの学習や実行には、最先端のGPU(画像処理装置)や高性能半導体が不可欠です。これらの製造工程では、極低温冷却やパージガスとして高純度ヘリウムが大量に消費されます。
国家戦略としてAIインフラが優先されるため、供給の割り当てが「AI・半導体 > 医療 >>> 風船(娯楽)」という序列で固定化されます。風船用ヘリウムは実質的に「市場から排除」される形となります。
次世代のAI基盤となる「量子コンピューター」は、極低温(絶対零度付近)でしか動作せず、冷却に液体ヘリウムが必須です。
AI技術が高度化するほど、研究・運用現場でのヘリウム需要が増大し、バルーンなどの娯楽用途への供給再開をより困難にします。
2026年3月の現時点ではヘリウムガスについての価格の影響は反映されていませんが、今後バルーンを扱う立場としてとても残念ですが、将来の景色には今世の「浮いている」という夢のある「風船」の存在はなくなると思ってください。
⑤ヘリウムショックと風船市場への影響
とはいえ、最近では高市首相が訪米し日米首脳会談で合意した安全保障でヘリウムにおいてもわずかな光が見え隠れする内容もありました。
2026年3月19日(現地時間)、ワシントンで行われた高市早苗首相とトランプ大統領による日米首脳会談では、中東情勢の緊迫化(イランによるホルムズ海峡封鎖リスクなど)を受け、日本のエネルギー安全保障を強化する画期的な合意がなされました。
主な合意内容は以下の通りです。
1. 天然ガス(LNG)・エネルギーへの投資と供給
日本が約束している総額5,500億ドルの対米投融資の第2弾として、約11兆円(730億ドル)規模のプロジェクトが発表されました。
ガス発電所の建設: ペンシルベニア州とテキサス州に、AIデータセンターの電力需要を支えるための大規模な天然ガス発電所を建設します。
アラスカ産エネルギーの活用: 中東依存を減らすため、アラスカ州での原油・天然ガス増産に向けた協力で一致しました。トランプ大統領は日本を「アラスカ産エネルギーの重要顧客」と位置づけ、日本への輸出拡大に向けたインフラ整備を加速させる意向を示しました。
2. 次世代エネルギー技術(小型原子炉:SMR)
日米共同でのSMR建設: 日立製作所やGEベルノバが中心となり、テネシー州とアラバマ州で次世代型の小型モジュール炉(SMR)を建設することに合意しました(約6兆円規模)。
背景:ヘリウム市場への示唆
会談では、イラン情勢によるホルムズ海峡の安全航行についても協議されました。この地域の不安定化は、カタールからのヘリウム供給途絶を意味するため、今回のアラスカ産エネルギーや米国本土でのガス開発の強化は、天然ガスの副産物であるヘリウムの代替供給源を確保するという文脈でも極めて重要な意味を持っています。
今後、この「日米エネルギー同盟」が日本の産業(半導体や医療など)におけるヘリウム不足をどこまで補完できるかが注目のポイントとなります。
結果としてこの情勢を見守ることしかできないのですが、できるだけヘリウムなしのアイテムを充実させていくようにシフトすることをオススメします。