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 山城あきんど講座
京都宇治市山城地区の小売り事業を営んでおられる方を対象に、これまで風船の仕事を通して培ってきたビジネスのカタチを宇治商工会議所で講義させていただきました。類似した業態の方はいらっしゃいませんでしたが、ビジネスという切り口では、共通または共有できるものがあったように思います。基本的にプロデューサーKaharaの哲学的な内容ですが、付加価値をテーマとした講義となりました。
付加価値について
1個の風船はアイデアとコンセプトひとつで、いろいろなオケージョンにおいて意味のある存在になります。ここで重要なのは「アイデア」を如何に意味付けするかということ。「売れているから」ということで単に「売るだけ」の商材は短命になってしまいますが、「売ることの意味」が明確であれば、商材の価値が高まると考えます。
「何のために」「誰のために」売るのか…。そしてそれはどんな結果を導き出すのか…。
これは本来メーカーサイドが考えるべきコンセプトですが、商売上お客様を相手にする以上、末端の売り手もコンセプトを理解する必要があると思います。さらに末端の売り手もメーカーのコンセプトを上回るくらいの魅力を感じないと、消費者が想像する以上の価値は見出せないと思います。
と、そんな類いのお話です。
玩具としての位置づけを脱却し、ギフト・アートとしての可能性に挑戦
私がバルーン市場に参入したのは今から15年前の1993年のこと。当時、風船というのは子どもの玩具としての位置づけしかなく、市場規模としては非常に限られたものでした。しかし、アメリカの事例を調べてみると、その何年も前から“ギフトとしての風船市場”が確立されていて、バルーンショップといわれる小売店が町のあちこちに存在している…。「これは新たなビジネスになる!」と考えたんです。早速、ロス郊外のバルーンショップに修業に出かけ、販売や接客の方法、どういう場面でどのようにして風船を売っていくかを学びました。帰国後、大阪でバルーンショップを開いたのですが、当初の予想に反して、顧客の中心は子どもばかりで、わずか3カ月で店が潰れそうになりました。
アメリカでは、誰かの誕生日に“ハッピーバースデー”と書かれた風船を添えて、プレゼントと一緒に渡す習慣があります。つまり、風船代の30ドルは「私のためにこんなことまでしてくれた!」という、誕生日のサプライズを贈るための目に見えない価格なんです。ところが、日本人の感覚は「30ドルも払うのだから、何日ぐらい使えるの」というもの。日本人とアメリカ人のモノに対するとらえ方の違いが、新たなビジネスを進めていく上で大きなギャップとなりました。そんなとき、知人から「風船でデコレーションをやってくれないか」という誘いを受け、まだ日本では誰も取り組んでいる人がいなかったことから、“アートとしての風船”もおもしろいなと思ったんです。
創造力、自信、非常識への挑戦で、プラスαの付加価値を生み出す
風船4つの原価は百数十円ほど。これが、結婚式の披露宴では3,500円から4,000円の価格になります。その商材に独自のアイデアや創作力を付加していくことで、新たな市場が生み出され、従来の相場にとらわれない自由な価格決定権が発生します。たとえば、私は、透明な風船の中にハート型の風船を入れておき、キャンドルサービスのときに外側の風船を割ってハートを会場に浮かべるという演出を行っていますが、キャンドルサービスという“静”の領域に、お客様が驚くような“動”の要素を取り入れることで、新たな付加価値につながっているわけです。
風船の中にハート型の風船を入れることは、それほど難しいことではないし、今までにも使われていた技術です。目の前に存在しているもの、当たり前のように存在しているもの…そこから創作力・創造力を働かせ、どのような目的・効果を生み出すのかを考えることが大切です。私の場合、バルーンビジネスという未知の市場のなかで、誰もビジネスのやり方を教えてくれる人がいませんでした。すべて独学で取り組んできたのですが、だからこそ自分で考えたこと、身につけてきたものを“マーケット・イン”で取り込むことができたのです。
一つの商品を考えるにあたって、自信をもつことはとても大切だと思います。せっかく考えたアイデアをお客様に提案しても、プレゼンテーションではねつけられることもありますが、「なぜダメだったのか」「では、どうすればいいのか」など、原因と結果を追求することで、対応策や解決策が見つかり、その一つひとつが自信へとつながっていきました。無駄な経験というものはありません。今まで、皆さんが取り組んできたことをもう一度振り返って、“今必要なことは何か”“自分ができることは何か”を見つめ直すことで、新たなビジネスの道筋が見えてくると思います。
もう一つは、非常識を常識に変えるということです。当初、披露宴で風船を“割る”なんて、めでたい席では縁起が悪いと考えられていました。しかし、風船を割るのではなく“開く”という発想をもつことで、「それはおもしろい!」と市場で受け入れられるようになりました。いったん、その考えが広まれば、それが常識へと変わっていきます。30代、40代になると考え方が保守的になり、思い切ったチャレンジができなくなりますが、経験を積んだ世代だからこそできるような要領のいい冒険もあると思います。「こうでなくてはならない…」と考えるのではなく、業界の常識は自分の手で切り拓いていくという気概をもっていただきたいと思います。
お客様に感動を伝える仕組みを考え、新たなビジネスチャンスを切り拓く
自分のために風船を買っていく人はほとんどいません。お母さんが子どもに買ってあげたり、親しい友人にプレゼントしたりと、風船は“人と人との間に介在する商材”といえます。結婚式のデコレーションやショッピングセンターのオブジェを見たお客様は、「ああ、おもしろそうだな」と表情を緩めますが、そこに風船があるからではなく、見た目のちょっとした感覚に訴えているに過ぎないということに気づいたんです。もっと、ダイレクトに人を感動させる方法はないだろうか…。こうして行き着いたのが、結婚式や披露宴での演出です。
結婚式では、カメラマンや照明、司会者などさまざまな人がかかわっていますが、それらを取りまとめ総合的に具体化するようなプロデューサー役はいません。私は、新郎新婦と丸一日向き合って徹底的に話し合い、モチベーションを高めて距離感を縮めることから始めています。ともすれば、受け身になりがちな披露宴の新郎新婦を引き立てるにはどうすればいいか…。思いつきで演出を行っても、何を訴えたいのか目的が不明確になってしまうでしょう。私の場合、まず“理想の結婚式、披露宴はこういう形だ”という仮説を立て、その仮説に到達するために何ができるのか、結論から逆算することで、「映像や照明、風船はこのようにしよう!」という提案を行っています。
このとき大切なことは、“下手に出て、上からしゃべる”ということです。相手はお客様なので、上から出て、上からしゃべると当然嫌がられます。下から出るが、お客様の知識・感覚を上回った提案を行う。どうしてこのような演出が必要なのか、「ああ、そういうことなのか!」という言葉をお客様から引き出すことができれば成功です。
私が提供している演出サービスの価格は22万円。この額は、たとえば音楽をされている方ならおわかりと思いますが、高嶺の花といわれるギターを購入できる金額です。そのギターを使えば、もしかすれば将来、何千万、何億円を稼ぎ出すギタリストになれるかもしれない…。その無限の可能性を秘めた金額を、ただ単に商品の対価として受け取るのか、それとも“自分に何ができるのか”と一生懸命になってサービスを考えるのかによって、ビジネスやサービスの質はまったく違ったものになってくると思います。
私のビジネスは、これで完成形ではなく、あくまで「風船を通して直接的な感動を与えたい」という目的に対する一つの通過点に過ぎません。まだまだ、現在進行形です。最近のお客様は1980年から1990年生まれの方が中心で、彼らはモノがあり余った時代に育った世代。一つのモノがどのように作られ、なぜ存在しているのか、その意義や意味をはっきりと理解していない人もいます。今後、彼らにモノの仕組みや理屈を伝えることも重要になってくるでしょう。
ビジネスというのは、その時々の人や社会とのかかわりのなかで成り立つものです。これからも社会や時代の流れ、消費者ニーズに敏感に応えながら、風船を核とした新しいビジネスを提供していきたいと考えています。
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